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そもそも「がん」ってどういう病気?

がんは遺伝子が突然変異を起こして細胞分裂が止まらなくなった病気です。

ヒトを含めた生物の身体は細胞によって形作られており、細胞の1つ1つは外界と隔てる細胞膜に包まれた内部に遺伝子(DNA)の詰まった核とミトコンドリアやゴルジ体などを含む細胞質によって構成されています。そして細胞はDNAの情報に基づく条件下において分裂し、増殖していきます。細胞、遺伝子が正常であれば生命活動に必要な範囲で細胞分裂は制御され、勝手に増殖することはありません。

ではがんが発生するとき、細胞の中ではどのようなことが起きるのでしょうか?

基本的に細胞の内外やり取りは細胞膜で行われて細胞にとって危険となるものが細胞内に入らないようになっていますが、がんの原因となるものが細胞膜と核膜を通過してしまった時、DNAを切ってしまうことがあります。DNAは2重螺旋を描くひもや鎖のような構造をしていて、螺旋同士が互いを補填するようになっています。その2重螺旋の片方だけが切られてしまった場合(1本鎖切断)であれば、細胞に備わったDNA修復機能によってDNAがほぼ正確に修復され事無きを得ます。しかしこれがもし2重螺旋の両方を切ってしまった場合(2本鎖切断)だと、互いに補填し合う螺旋の両方を失ったことから、正確な修復が行われずにDNAの配列に異常が残ってしまいます。これが突然変異です。異常が残った個所が細胞の生命活動にかかわる部分であればその細胞はそのまま死んでしまって周りの細胞に影響を与えることはありませんが、異常箇所が細胞分裂を制御する部分だった場合、制御を失ったその細胞は際限なく増え続け、やがて正常な細胞の活動を阻害してしまいます。この制御を失って増殖し続ける細胞こそが「がん細胞」とよばれるものの正体なのです。

例えば時折ニュースで報じられるアスベストと呼ばれる物質がありますが、アスベストは非常に細かい針状の構造をしていて、細胞サイズで見ると刀や槍のような物となります。そしてアスベストが細胞に刺さると核まで届きDNAの2重螺旋の両方を切ることもあります。その後細胞の動きでアスベストが抜けると、細胞膜や核膜は修復され、DNAの切れた細胞が残ります。切れた場所が細胞分裂を止める働きに関係する場所であるならば、この細胞はがん細胞になってしまいます。

またピロリ菌が胃がんの原因と言われることもありますが、ピロリ菌がDNAを切断することは今のところ実証されていません。ピロリ菌が増殖したから胃がんになったのか、胃がんが進行して胃酸の分泌が少なくなったのでピロリ菌が増殖しやすくなったのか、どちらが先は分かっていません。ピロリ菌は1本のベン毛を高速回転させて移動するという生態であるため、ベン毛が細胞にあたった場合その細胞を傷つける可能性はあります。

現在、我々の身の回りに存在するものの中で、最も確実にがん細胞を発生させる要素と言えるのは放射線です。日本政府は広島長崎の被爆者一人ひとりの被曝量を推定し、1985年まで健康調査を行ないました。その結果、放射線被曝ががんの原因になること、被曝量とがん発生率の増加が比例することを証明しました。

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