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放射線の種類とがんの発生させやすさ

目次
①α線の場合

②β線の場合

③γ線の場合

まとめ:ラドン222とセシウム137の比較

放射線が生物の細胞に衝突または通過したとき、その内部にあるDNAを傷つけることがあります。

一般的に同じ種類の放射線が体内の同じ臓器に当たる場合、その臓器に当たる放射線の数が多ければ多いほど、臓器に与えるエネルギー値が大きければ大きいほど、細胞内のDNAの傷付く箇所の増加もしくは損傷具合が増大によってがんが発生しやすくなります。

ところが放射線による影響の大きさは放射線の数やエネルギーだけで決めることは出来ません。放射線の数やエネルギー値が同じであっても、どの種類の放射線が、どのような形で体内のどの臓器に当たるのかによっても大きく変わります。

このページでは別ページにて解説したα線・β線・γ線を例に挙げ、放射線の種類によって細胞およびDNAに対する影響にどのような違いが生じるかを解説します。

①α線の場合

α線の正体はヘリウム原子核(陽子2個と中性子2個)であるため、他のβ線やγ線と比較して圧倒的に質量が大きい(β線の質量はα線の約7300分の1、γ線の質量はゼロ)という特徴があります。

一般的に放射線と呼ばれているものの性質として放射線が物質中の原子や分子に当たった時、原子内の電子を弾き飛ばしてその原子や分子を陽イオン化させることができます。これを電離作用と言い、発生した陽イオンによってDNAが傷付いてしまいます。例えばDNAの周囲に存在している水分子を電離させて、その時生じたイオンがDNAを間接的に傷つけてしまうことが良く知られています。

α線も当然、原子や分子に対して電離作用を働かせるのですが、α線の質量は炭素原子核の3分の1、酸素原子核の4分の1と非常に大きく、α線がそれらの原子核に直接当たった時に原子核そのものを弾き飛ばしてしまうことがあります。原子核に見立てたボーリングの球に少し小さい砲丸投げの球(α線)があった時の様子を思い浮かべてみてください。ピンポン玉(β線)がボーリングの球にいくらたくさん当たってもボーリングの球はほとんど動きませんが、砲丸投げの球であれば動かすことは可能です。これがDNA内の原子に対して起きれば、DNAに多大なダメージを与えてしまいます。

α線は水中をおよそ50μm程度しか飛びません。しかし逆を言えば「その短い範囲に全てのエネルギーを落としてしまう」とも言えます。特にα線はエネルギーを失って(速度が低下して)止まりかけの時に最もエネルギーを落とします。そのエネルギー量があれば、DNAを構成する原子の原子核を直接弾き飛ばしたり、その周辺の狭い範囲に電離作用を引き起こしたりしてDNAの二重螺旋の両方を切断してしまう2本鎖切断に代表される修復しにくい損傷を引き起こしてしまうことが容易となります。そして放射線以外の要因の影響を受けにくという特徴もあります。人間の細胞の平均サイズがおよそ20μmであることから、体内にアルファ線の発生源が存在しているとき、周囲の細胞を被曝させるのに最適な長さであると言えるでしょう。

これらのことからα線の源が体内に存在している場合の危険性は非常に大きく、放射線の数やエネルギーが同じであってもα線はβ線やγ線の20倍の発がん能力を持っています。

これはα線以外にも重粒子線や中性子線といった質量の大きい放射線においても同様のことが言えます。

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②β線の場合

β線の正体は電子、つまり電荷を持つ非常に軽い粒子であるため、α線のように原子核を弾き飛ばすことはできませんが、進路上に存在している原子に含まれている電子を電離作用によって弾きと飛ばして、中性の原子をイオンに変えながら進んでいきます。

β線の飛程は水と同じ密度を持つ体内であれば5mm程度です。線源が体外にあれば影響はかなり小さくなります。β線は飛んでいる間にほぼ均一な間隔で原子内の電子を弾き飛ばしてイオンを発生させるため、放射線の影響はα線のように局所的にはならず、ほとんどが水分子をイオン化させてDNAを損傷させる作用となります。この場合DNAへの影響は2重螺旋の片方だけを切る1本鎖切断が大部分であり、これはDNAの修復機能が働きやすいことからβ線の影響は同じエネルギーのα線と比較してがんが発生する確率が低くなります。また電離作用によって発生したイオンを仲介することによる間接的な作用が主となる関係上、放射線以外の要因の影響を受けやすいという特徴もあります。

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③γ線の場合

γ線の正体は光子…つまり光と同じ電磁波の一種であるため、電荷も質量も持っていません。

しかしγ線が原子の中と電子に衝突すると、散乱しながらエネルギーを落としつつ電子を弾き飛ばして電離作用を引き起こします。この散乱現象をコンプトン散乱と言います。人体の中であればおよそ10cmに1回の頻度でコンプトン散乱および電離作用を引き起こしたあと、大抵の場合は体の外へ飛び出していきます。そのためγ線は線源が体内にあろうと体外にあろうと影響の大きさに差はあまりありません。コンプトン散乱によって弾き飛ばされた電子が電離作用を引き起こすこともありますが、効果範囲がα線のように1カ所に集中することはないことから、γ線の影響はβ線と同様に同じエネルギーのα線と比較してがんが発生する確率が低くなります。

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まとめ:ラドン222とセシウム137の比較

放射線による被曝は、放射線の本数・エネルギー・種類・被曝する臓器などによって大きく変わります。

基本的に骨髄(造血器官)生殖器といった生きていくうえで細胞分裂が盛んに行われている箇所は放射線の影響を受けやすく、逆に皮膚や骨表面や神経などの細胞分裂があまり行われていない箇所は放射線の影響を受けにくくなっています。

ここではα線の代表としてラドン222が出すα線、β線とγ線の代表として福島第一原発事故でよく知られるようになったセシウム137、そして宇宙線を比較してみます。(セシウム137はβ線を出してバリウム137の励起状態となり、直後にγ線を出してバリウム137の安定状態になります。)

ラドン222のα線のエネルギー値はセシウム137のβ線のおよそ10倍ですが、α線は生体内で50μm程度しか飛びません。β線も数mmです。γ線と宇宙線は生体を貫通します。このため放射性物質が体外にある場合と放射性物質が体内にある場合では被曝の状況が全く異なります。バリウム137のγ線による被曝量を1とした時の値と比べた相対被曝量は、放射性物質を体外に置いた状態ではラドン222のα線は0、セシウム137のβ線は0.01、宇宙線は20程度ですが、放射性物質を肺に取り込んだ状況ではα線は2,000、β線は10程度となり、胃や腸の中に入った場合は、放射性核種が単独で存在しているか食品表面に付着していると肺と同様な被曝量であり、食品や水滴の内部に入っている場合はα線で0.1、β線で1程度となります。すなわちα線放出核種が裸で単独に体内に入る場合が最も危険となります。

・放射線の影響は放射線の本数・エネルギー・種類・被曝する臓器によって大きく変わる。

・α線は体内に存在すると影響が1か所に集中しやすく、DNAに修復しにくい損傷(2本鎖切断)を引き起こしやすいため、がんの発生確率が高い。

・β線やγ線はα線のように影響が1か所に集中することはなく、大部分が修復しやすいDNA損傷(1本鎖切断)であるため、がんの発生確率が低い。

・骨髄や胃、肺、生殖器などの細胞分裂が盛んな部位は放射線の影響を受けやすい。

・日常における体内被曝では、α線を出す放射性物質が単独で体内に存在している状態が最も危険!

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