肺がんとタバコ 肺がん増加の主原因はタバコではない
現在、国内では年間およそ37万人の方ががんによって命を落としています。そのうち、部位別に見ると肺がんが年間8万人と最も多く、その次に大腸がんが年間5万人、胃がんが年間4万人と続いています。
肺がんの原因は長い間タバコによる喫煙が主原因であると考えられ、その認識が広く浸透していきました。しかし、肺がんによる死者数とタバコの販売本数の年代ごとの変化を調べていくにつれて、必ずしもタバコが肺がんの主原因ではないことが分かってきました。
上図の2つのグラフはそれぞれ最近50年間の肺がん死者数とタバコの売上本数の年代推移を示しています。肺がんの死者数は年々増加しているのに対し、タバコの売上本数は1970年代半ばから1990年代後半をピークに減少しており、この20年間でおよそ3分の1程度にまで落ち込んでいます。またタバコは1970年ごろから2000年ごろまでの間にニコチンやタールの含有量が少ない銘柄(例えばセブンスターからマイルドセブン)が好まれるようになり、近年の禁煙キャンペーンで喫煙率が大幅に下がりました。もし肺がんの原因がタバコのみであるならば、タバコの売上本数の減少から数年~十数年遅れる形で、肺がんの死者数も減少に転じていなければなりません。
このことから肺がんには「タバコが原因の肺がん」の他に「タバコが原因ではない肺がん」があるのが明らかです。現在タバコが原因の肺がん死者は年間15,000人以下だと弊社は考えています。
現在、残りのタバコ由来ではない肺がん、そして大腸がんと胃がんは原因不明とされていますが、我が社はそれらのがんの原因を発見したと考えています。その原因は地中から湧き出てくるラドンとその崩壊生成物から発せられる放射線であり、それらを室内に溜め込んでしまう空調方法にあります。
ラドンと肺がん
ラドンはラドン温泉のラドンです。ただしラドンとお湯が一緒なのは噴き出し口までで、地上に出るとラドンとお湯は完全に分離します。温泉の中にラドンは入っていません。
ラドンは空気1ℓ中に10,000原子含まれている放射性ガスですが、肺がんなどのがんを作る能力は強烈です。
ラドンは原子番号86の元素で、周期律表ではヘリウムやネオンがいる最も右のO族元素(不活性ガス)であり、空気のおよそ7.5倍の密度がある非常に重たいガスです。地球内部に広く存在するウラン238の崩壊で発生しますが、液体のガラスと見做せるマントルの内部で発生したラドンは上昇し、マントルと地殻の境界面に集まります。そして地殻に断層や亀裂・隙間があれば大気中に出てきます。ラドンの地球内部からの湧き出しを止めることはできません。また、ラドンは単原子分子で他の原子と化学反応を行わないため、フィルターや吸着剤などで除去することは出来ません。
ラドンは半減期22年の鉛210に変わるまでに約50分で3本のα線と2本のβ線を出します。このうち危険なのは肺の中で発生するα線です。α線は水中を約50μm、空中を4cm程度しか飛びません。人体の外側は表皮というバリアで覆われています。表皮は死んだ細胞でできているのでα線が当たっても健康被害はありません。ところが呼吸によってラドンを肺に吸い込んで、肺の中でα線が発生したら大被害となります。肺の入り口部分である肺門部は呼吸によって肺の形が変わったり肺が潰れてしまわないように、一定の厚さの表皮で覆われています。ところが肺の末端部分である肺野部では、効果的に酸素と二酸化炭素を交換できるように、表皮がなく薄い真皮が暴露されています。α線は短い距離でエネルギーを消費するので、α線が当たった細胞は大きな影響を受けます。ラドン原子1個が呼吸によって肺の中に入り崩壊した場合は、福島第一原発事故で有名になったセシウム137が出すγ線6,000本と同程度のがん発生確率があります。なお、タバコに含まれるニコチンやタールは鼻・口・喉・気管・気管支ではほとんど吸収されず、最初に吸収されるのは肺門部です。このためタバコが原因の肺がんは肺門部(扁平上皮がん、小細胞がんなど)に、ラドンが原因の肺がんは肺野部(肺腺がんなど)に発生します。
ラドンとは?
霧箱によって視覚化したラドンのα線(太くはっきりしているもの)
ラドンと国際機関
国連の中には放射線の影響に関する科学委員会(United Nation Scientific Committee on the Effect of Atomic Radiation)という組織があります。この組織の2008年報告の重要部は以下の通りです。
- 肺がんの主な原因はタバコかラドンの吸入摂取である。
- ラドンは高密度なので鉱山のような地下に高濃度で集積する。太古から1950年代まで世界中の全ての鉱山で肺がん死亡者が一般人より多かったが、その原因はラドンである。
- 1950年代の世界中の鉱山におけるラドン濃度と肺がん死亡率の関係から、現在の屋外でのラドン濃度で暮らしていると、人口1億人あたり毎年6,000人が肺がんで死亡する。
- 建物内でラドン濃度が大きくばらつくことがある。ある建物ではラドン濃度がほとんど0の場所から外界の10倍以上の場所まで存在する。
UNSCEAR2008は報告なので測定事実の記載だけでその理由は推理していません。しかしラドン濃度がばらつく理由は簡単に説明できます。エアコン普及前は夏の暑さ対策として風通しの良い家が好まれました。ここでは室内の空気が頻繁に屋外と入れ替わるので、室内のラドン濃度は屋外と同じでした。最近はエアコンの普及により建物の気密性が向上しています。部屋ごとにエアコンを使うときはその1部屋の気密性を高くすることになり、天井付近はラドン濃度が低く、床付近はラドン濃度が高くなります。また最近は建物全体が1個の気密室と見なせる建物があります。その場合は上層階のラドンは階段などを通って下の階に落ちて行くので、中層階以上はラドン濃度が低く、1・2階や地下があれば地下階はラドン濃度が高くなります。国連科学委員会報告では建物内でラドン濃度が大きくばらつくことをinner condensationと呼んでいます
国連世界保険機構(World Health Organization)は2009年9月に建物内のラドン濃度の上限を1ℓあたり46,000原子(=屋外ラドン濃度のおよそ4.5倍、1年間で人口1億人あたり25,000人が肺がんで死ぬレベル)と設定し、人が活動する室内のラドン濃度測定を行い、この値を超える場合はすみやかに対策を取るように各国政府へ勧告しました。
アメリカ政府は2006年から以下のようなラドン対策をしています。まず室内のラドン濃度の上限値を1ℓあたり69,000原子としました。また州ごとに建築業者を集めて講習会を行い、ラドン対策が行える業者を認定して、州の保健局のホームページで公開しています。2020年1月から米国環境保護庁(Environmental Protection Agency)がPrevent Lung Cancer by Testing your Home for Radonというキャンペーンを行なっており、毎年1月をNational Radon Action Monthとして室内のラドン濃度を住民自ら測定することを呼びかけています。そして、1ℓあたり35,000原子以上を改築を検討するレベル、69,000原子以上を速やかに改築工事を行うレベルとしています。
がんは最初のがん細胞1個が発生してから、それが細胞分裂を繰り返しがん組織が大きくなり、ついに死に至るまでに、20年程度かかる進行の遅い病気です。この20年間の無策がこれからの20年間のがん急増につながるのは確実です。
ラドンにとって最悪な日本の空調装置
ここからは弊社のオリジナルな考えです。
現代の日本では空調が広く普及しており、窓を開けることはほとんどなくなりました。そもそも窓が開かない建物も増えています。そして部屋ごとに空気を入れ替えるための吸気口と排気口が付けられていますが、その位置はラドンにとって最悪です。
従来の空調システム
全ての建物で排気口は天井についています。これではラドン濃度の高い空気は床付近に溜まり、ラドン濃度の低い綺麗な空気を屋外に捨てています。いわば浄水場の沈殿池で底に溜まった泥やゴミを含んだ水を飲料水に使い、上澄みの綺麗な水を捨てるようなものです。吸気と排気のラドン濃度が一致するまで室内の平均ラドン濃度は上昇します。そして平衡状態になった時に床付近のラドン濃度は屋外の100倍近くになります。このような部屋に毎日24時間過ごすだけで肺がん死者数は1億人あたり60万人になります。これは福島第一原発周辺の帰宅困難区域の基準を上回ります。
詳しくは別ページにて解説します。
原因がわかれば対策は簡単
上記のような危険性があるラドンですが、原因がわかれば対策は簡単です。フィルターや吸着剤での除去が不可能なラドンの濃度をコントロールする唯一の方法は、ラドンの密度が空気の約7.5倍であることに着目し、密室内の下部に集まるラドンを床付近の排気口から屋外に排出することだけです。そのため空調方法の簡単な変更や追加で室内のがん原因物質であるラドンを1/10〜1/100に大幅に減らすことが可能であり、その結果肺がんを含むがんの合計死者数を年間10万人以上減らすことができると弊社は考えています。