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放射線に関する学術用語について

放射線と原子とゆとり教育

質量数

放射線の種類とその違い

放射線による作用

ウラン238の崩壊反応とラドン222

放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)

放射線と原子とゆとり教育

現在の中学校理科では全ての物質には分子と言う最小単位があると教わります。
分子をさらに細かくすると原子になります。
そして今の中学校理科では原子の特徴について、

・原子はそれ以上わけることができない。

・原子はなくなったり、新しくできたり他の種類の原子に変わったりしない。

・原子はその種類ごとに決まった質量がある。

と教えていますが、これは今から300年ほど前の考え方であり、現代科学では完全な間違いです。
原子は原子核と電子で構成され、原子核は陽子と中性子で構成されています。
さらに陽子・中性子の仲間はハドロンと呼ばれクオークと呼ばれる粒子で構成されており、電子の仲間はレプトンと呼ばれます。
レプトンとクオークは素粒子であり、その素粒子こそが物質を構成する最小単位です。

クオークの発見は1970年代だったので、ゆとり教育以前の中学校理科では陽子中性子まで教えられていましたが、現在では上記のように教えるのが主流となってしまっています。
原子核の種類(陽子と中性子の組み合わせ)は天然・人工を含めて数多く存在し、加速器などで作るだけなら任意の陽子数と中性子数の原子核が作れますが、陽子と中性子のバランスが悪いと不安定になって他の原子核に変わります。
特に陽子間にはクーロン斥力が働くので、陽子数が82(鉛)より多い原子核は全て不安定核であるため、より小さな原子核に変わろうとします。
不安定な原子核が他の原子核に変わる時に放出されるかけらが放射線の正体です。

質量数

放射線関連のニュースを耳にする時、ラドン222やポロニウム218のように原子名+番号と記されていることがあるかと思います。この番号は質量数と呼ばれるものです。

陽子と中性子の質量はほぼ等しいため陽子数と中性子数の和は原子核の質量にほぼ比例します。

このため陽子数+中性子数を質量数と呼びます。

原子核は原子の名前または原子記号に質量数の数字を付けて表し、陽子数が同じでも質量数の異なる原子核を区別します。陽子数が同じであれば化学的な特性は同じですが、質量数が異なれば物理的な特性が異なります。これを同位体と呼びます。

例えばウランの陽子数は92ですが、地球に存在する天然ウランは核分裂を起こさないウラン238(中性子数146)が99.3%と核分裂を起こすので原子炉や原爆に使えるウラン235(中性子数143)が0.7%存在します。他にも昨今で話題となっている陽子数1中性子数2の三重水素(トリチウム)や陽子数38中性子52のストロンチウム90、陽子数55中性子数82のセシウム137、そして我が社が考える肺がん・大腸がん・胃がんの原因物質である陽子数86中性子数136のラドン222などが存在します。

 

放射線の種類とその違い

放射線には多くの種類があります。広義の意味では可視光線もまた放射線に含まれます。

その中でほとんどのがんの原因となり得る放射線は宇宙放射線(宇宙線)・α線・β線・γ線の4種類です。

宇宙線はその名が示す通り宇宙の彼方から地球へ降り注いでくる荷電粒子であり、地球上のどこでも存在しています。宇宙線は非常に透過性が強く、高山や飛行中の航空機内では強度が上がり、地下深くでは強度が下がりますが、厚さ1mの鉄でも10%しか遮蔽できません。宇宙線被曝によるがん死者数は人口1億人あたり毎年2,000人程度と試算されています。

α線の正体はヘリウム4の原子核です。軽い原子核の中で際立って安定な原子核は陽子2個と中性子2個のヘリウム4であり、このためヘリウム4は宇宙に極めて多く存在し、ウランやトリウムのような重くて不安定な原子核が軽くなる反応ではほとんどヘリウム4の原子核が放出されます。

β線の正体は電子です。軽い原子核では陽子数と中性子数が等しいか少し中性子が多いものが安定しますが、原子核が大きくなると陽子間のクーロン斥力のため陽子の多い原子核が不安定になり、中性子が陽子よりかなり多い原子核が安定になります。ですが同時に中性子が多すぎてもまた、原子核の形を保てなくなり不安定になります。原子核の中の中性子が多すぎて不安定な場合、中性子から電子を放出して陽子に変わる反応を行い安定な原子核に変化していきます(このときにニュートリノという素粒子も放出されますが、ニュートリノは物質とほとんど反応しないので、本解説では省略します)。このとき放出されてくる電子をβ線と呼びます。

γ線の正体は可視光やX線よりもさらにエネルギーの高い光です。α線やβ線を放出した原子核はほとんどの場合中途半端なエネルギー状態になり、ある程度安定な状態になるために余分なエネルギーを光の形で放出します。原子核のまわりにいる電子が出す光をX線と言いますが、このように原子核の中から出てくる光をγ線と呼びます。

 

・がんの原因となりえる放射線は宇宙線、α線、β線、γ線の4種類が存在する。

 

放射線による作用

α線やβ線、宇宙線は荷電粒子ですので、我々の体内を通過すると水分子を直接イオン化させて細胞内の分子間結合を切ることがあります。特に遺伝子の2重螺旋構造を同じ場所で2本とも切られると正しく修復できないことがあり、がん細胞の発生に繋がります。γ線は電荷を持たないのでそれ自身では直接遺伝子を被曝させないのですが、おおむね10cmごとに原子内の電子と衝突して電子を生体内で数mm走らせていき、この電子が生体を間接的に被曝させます。

放射線による被曝は、放射線の本数・エネルギー・種類・被曝する臓器などによって大きく変わります。ここではα線の代表としてラドン222が出すα線、β線とγ線の代表として福島第一原発事故でよく知られるようになったセシウム137を比較してみます。(セシウム137はβ線を出してバリウム137の励起状態となり、直後にγ線を出してバリウム137の安定状態になります。)α線は生体内で50μm程度しか飛びません。β線も数mmです。γ線と宇宙線は生体を貫通します。このため放射性物質が体外にある場合と放射性物質が体内にある場合では被曝の状況が全く異なります。γ線による被曝量を1とした時の値と比べた相対被曝量は、放射性物質を体外に置いた状態ではα線は0、β線は0.01、宇宙線は20程度ですが、放射性物質を肺に取り込んだ状況ではα線は2,000、β線は10程度となり、胃や腸の中に入った場合は、放射性核種が単独で存在しているか食品表面に付着していると肺と同様な被曝量であり、食品や水滴の内部に入っている場合はα線で0.1、β線で1程度となります。すなわちα線放出核種が裸で単独に体内に入る場合が最も危険です。

・体内被曝ではα線を出す放射性物質が単独で存在している場合が最も危険!

 

ウラン238の崩壊反応とラドン222

我が社が考えているがん原因物質であるラドン222は地中深くのマントル内に存在するウラン238の崩壊によって生まれます。

ウラン238 → トリウム234 → プロトアクチニウム234 → ウラン234

→ トリウム230 → ラジウム226 → ラドン222

質量数が4減る反応はα線放出反応で、質量数が変わらない反応はβ線放出反応です。ラジウムまでの反応は地球内部で起きているので我々の被曝には関係ありません。ラドン222は不活性ガスなのでマントル内を上昇し、地殻に割れ目があれば地上に出てきます。ラドン222以降の反応では半減期も示します。

ラドン222(3,82日) → ポロニウム218(3.10分) → 鉛214(26.8分) → ビスマス214(19.9分) →

 

ポロニウム214(1万分の1.64秒) → 鉛210(22.2年) → ビスマス210(5.01日) →

 

ポロニウム210(138日) → 鉛206(安定)

 

上の模式図では縦軸が質量数を、横軸が陽子数を表しています。
ラドン222はラドン温泉のラドンです。ただしラドンとお湯が一緒にいるのは噴き出し口までで、地上に出るとラドンとお湯は完全に分離します。温泉の中にラドンは入っていません。
ラドンは空気中にわずかに(1ℓあたり1万原子=0.000 000 000 000 000 000 039 mol)含まれている放射性ガスですが、肺がんなどのがんを作る能力は強烈です。
ラドン222を吸入すると比較的半減期の長い鉛210へ至るまでに、ポロニウム218とポロニウム214の時を含めて合計3本のα線で肺の内壁の細胞分裂が盛んな部位が被曝することになります。
ラドン原子1個が呼吸によって肺の中に入り崩壊した場合は、福島第一原発事故で有名になったセシウム137が出すγ線6,000本が体に当たった場合と同等の発がん能力があります。

また、食堂内でラドン222から生じたポロニウム218は秒速100m程度で食堂内を飛び回ります。食堂のテーブル上にお茶碗1杯のご飯を置いておけば3.1分の間に約50%の確率でご飯の表面に付着します。ご飯を食べる前にポロニウム218がα線を出したとしても胃の中で47分後にポロニウム214からのα線が胃の内壁を被曝させます。

お茶などの飲料水に溶けたポロニウム218は水滴の内部に入っているため胃は被曝させません。鉛214とビスマス214の半減期の和はご飯粒のような固体は胃の中に止まっていますが、液体ならば小腸を通過して大腸にまで到達できる十分な時間です。そして大腸で水分が吸収されるとビスマス214は裸になり、そのあとのポロニウム214からのα線が大腸の内壁を直撃できます。

鉛210の半減期は22.2年と長い時間が掛かりますが、人間の寿命よりは短いので、中高年になるとポロニウム210が血液に出てきます。どこかの臓器にポロニウム210が蓄積してがんを作る可能性もあります。

放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)

国連の中には放射線の影響に関する国連科学委員会(United Nation Science Committee Effects of the Atomic Radiations)と言う組織があり、数年に一度報告書を公表しています。

参照:https://www.unscear.org

日本政府は広島長崎の原爆を生き抜いた被曝者の被曝量調査と死亡年月日と死因の調査結果をまとめて、「被曝量とがん死亡率の増加量は比例する。1シーベルト被曝した人は一般人に比べてがん死亡率が5%増加する。」と発表しました。UNSCEAR1990(1990年報告)はこの日本政府の発表を妥当だと認め、そこで50年間暮らすとがん死亡率が5%以上増加する場所、すなわち1年間で20ミリシーベルト被曝し、人口1億人当たりの年間がん死亡者が一般地域より100,000人以上多くなる地域を立ち入り禁止区域に指定することを提案しました。
(被曝量・正確には等値線量の単位はシーベルトですが、一般の方には分かりにくい単位なので、本ホームページでは被曝の危険性を人口1億人あたりの年間がん死亡者数の増加数で表記します)

UNSCEAR2008(2008年報告)では放射線の危険性、特にラドン222の危険性を精査していました。
地球内部にはウランが大量に存在し、ウランから上記の崩壊の道筋を辿って発生したラドン222は恒常的に地球内部から噴き出しています。
ラドン222は空気の約7.5倍の密度を持つため、地下空間などに高濃度で存在しています。太古から1950年代まで世界中の鉱山で見られた多数の肺がん死者の原因はラドンであると報告されました。ラドン222は世界中の地表でどこでもほぼ同じ濃度で存在し、人体には呼吸によって取り込また時に崩壊を起こすと放射線(α線)を出して肺の組織を内部被曝させます。
自然界に存在する放射線のうち、宇宙線や岩石中の放射性物質、食品中の放射性物質などからの放射線被ばくによるがん死者数の増加量は1億人当たり年間6,000人と言われていますが、それらとは別にラドン222からのα線による肺がん死者も、室内のラドン濃度が屋外と同じであるならば1億人当たり年間6,000人増えると確認されています。

また、UNSCEAR2008では室内の状況によって室内のラドン濃度が大きく変化し、それに伴って年間肺がん死者数も増減するとも指摘されています。UNSCEAR2008において現代人のラドンによる肺がん死者数は1億人当たり年間1,000人〜50,000人であると幅の広い値が示されています。

歯の広い値が示されているのには理由があります。
年間1,000人の場合は住宅と職場・学校のある場所が共にビルの高層階といったラドン濃度の低い場所で長時間過ごしている人たちのケースです。ラドンガスは空気よりはるかに重いため高層階ではラドン濃度が薄く、わずかに存在するラドンも階段やエレベーターホールを通って下の階に落ちて行きます。高層階に長時間過ごしいる人たちはほとんどの時間をラドン濃度の低い空間で過ごしていて、通勤・通学や買い物などで外出した時だけラドン濃度の高い空間を移動して被曝するという生活を送っているため、屋外(地表付近)よりも年間肺がん死者数が少なく抑えられていると予想されています。
逆に50,000人の場合は住宅と職場・学校が共にエアコンのある気密性の高い1・2階で暮らしている人のケースです。UNSCEAR2008の参考論文の中には室内における床からの高さを変えてラドン濃度を正確に測定したものがあり、エアコン使用を前提とした気密性がある実際の新築住宅で床付近のラドン濃度は屋外の10倍程度になると示されています。この50,000人の人たちはこういったラドン濃度の高い空間に長時間過ごしているため、屋外ラドン濃度の場合よりも年間肺がん死者数が増加してしまっていると指摘されています。
この件は別ページにて詳しく解説します。

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